東京高等裁判所 昭和35年(く)91号 決定 1960年9月12日
少年 D(昭二一・二・一一生)
主文
本件抗告はこれを棄却する。
理由
本件抗告の趣意は、附添人高梨克彦名義の抗告理由書と題する書面に記載せられているとおりであるから、ここにこれを引用する。
本件保護事件記録並びに少年調査記録に徴すれば、少年は昭和三十三年四月東京都品川区立○○中学校に入学したが、学業をいとい、学友との交友関係は良好でなく、欠席日数も多く殊に第三学年に進学してからは一日も登校せず、少年の両親も教育に熱意がなく、その保護能力にも欠くるところがあつたため少年は昭和三十五年四月頃よりは屡々家出して附近を放浪し、不良徒輩とも交友し、遂に本件の如く二回に亘る忍び込み窃盗事犯を敢行するに至つたものであるが、少年は本件以外にも同年五月頃前後五回に亘り窃盗事件によつて補導せられていることが認められる。これに少年の知能が低いこと、その他家庭の状況等記録に現われた諸事情を考量すると、少年を相当期間初等少年院に収容し環境を調整しその性格を矯正するの措置を講ずるを以て適切妥当な方策と認めざるを得ない。よつて少年を初等少年院に送致する旨の原決定は洵に相当であつて、所論の諸事実につき十分考量するも、決して不当な処分とは考えられないから、本件抗告はその理由がなく、少年法第三十三条第一項に則りこれを棄却すべきものとし、主文の如く決定する。
(裁判長判事 三宅富士郎 判事 東亮明 判事 井波七郎)